性風俗は蔑まれるべき産業でなく、遊女は憧れの職業だった


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売春は世界各地に見られる普遍的(ふへんてき:すべてにあてはまること)な文化です。また、その発祥も人類が文明を作り上げた最初期であるといわれ、「人類最古の職業」とも考えられています。

しかし、発祥の詳しい経緯については明らかになってはいません。各地域の考古学者が真剣に取り組んでも、いまだに不明な点が多いのです。

ただ、これら性風俗を蔑まれがちですが、実はかつての日本ではそのような認識はありませんでした。これらを理解するため、売春の起源や日本での性風俗歴史について確認していきます。

売春の起源を理解する

売春発祥における主な起源(はじまり)としては「単一起源説」と「自然発生説」が挙げられます。両者とも、まだ曖昧な点が多いですが、いずれはどちらかが主流となることでしょう。

売春単一起源説

売春は人類文明が発祥したのと同時に花開いた文化です。「黄河文明」、「メソポタミア文明」、「インダス文明」、「エジプト文明」がいわゆる4大文明として有名ですが、いずれもその地域が人類の生活に適合していたからこそ生まれたものでした。

ただ、今いる人類そのものの起源は、アフリカであると考えられています。もちろん、各地域から今いる人類が個別に生まれたという説もありますが、遺伝子解析などから人類はアフリカで生まれた種であるとする説が中核を担っています。

すると各文明も、「実はすべてアフリカにルーツがあり、それぞれ全くつながりがないわけではない」ということが仮定できます。

その論拠のひとつとなるのが、「見るなのタブー」です。旧約聖書では、神が「ソドムとゴモラという街を滅ぼす」というエピソードがあります。その際、神はロトという人物に「逃げる際、決して後ろを振り向くな」と伝えたのにも関わらず、彼の妻は後ろを振り向いてしまい塩の柱となってしまったのです。

こうした話は日本神話にも、とても類似したエピソードがあるのです。男神であるイザナギが、妻であるイザナミのいる黄泉の国から帰る道中、後ろを振り返ってはならないことになっていたのにも関わらず、その禁を破り恐ろしく変貌した妻の姿を見てしまったというお話です。

このように、「見るなといわれているのに見てしまう」エピソードは、世界各地にあるものです。当時、まったく文化の交流ないと考えられていたのに、こうした類似点が見られるということは、やはりすべての文化の原始が同じ場所(アフリカ)に根差していたという説の裏付けとなります。

つまり、初めの売春がどのような経緯で生まれたかは別として、起源は同じものであるとするのが、売春単一起源説なのです。

売春自然発生説

一方で、売春は各文化において個別に発生したものであるという考え方をする説もあります。しかし、そうなってくると、各地域で売春が発生した理由を個別に考えていかなければなりません。そのため、ここでは日本でどうして売春が生まれたのかを見ていきましょう。

まず、日本の原始的な社会は「狩猟採集社会」でした。農耕がまだ発生していなかったため、こうした不確かな手段で食料を得るしかありませんでした。そのため、物を得る際には自分で採るか、物々交換をするしかなかったのです。

しかし、女性であれば、物をもらったお礼として「別の物をあげる」こと以外にも、他のお礼方法もありました。それが、「自分の身を売る」という手段です。

この時こそが、「技能を売り、物を得る」という概念が生まれた瞬間だといえます。

日本だけではなく、世界中においても社会の発達とともに、「技能を売り、物を得る」という概念は広がりを見せました。ただ、技能といっても、「体を売る」ということは真っ先に思い浮かべることができるものです。そのため、売春こそが「人類最古の職業」といわれます。

売春の起源は、不明な点ばかりです。しかし、それが大変深い歴史を持っているということは確かなのです。売春は世界各地で大きな影響を与え、歴史の一翼を担い続けた文化であるため、その歴史を知ることはとても有意義であるといえます。

日本の性風俗

それでは、日本の性風俗はどのような認識だったのでしょうか。一般的に、性風俗と聞いて「楽しいところ」、「男のたしなみ」などといったプラスイメージを持つ方もいますが、悲しいことに大多数の方は「不健全」、「教育によくない」、「恥ずべき文化」などといったマイナスのイメージを持っているようです。

ただ、不健全と一言で片づけてしまうにはもったいないほど、性風俗はあまりにも長い歴史を持っています。また、常に日本の文化とともにあった伝統といっても過言ではありません。

太古から中世にかけての性産業

性風俗のルーツを見ていくと、実は日本神話にその源流が見られます。

日本神話では、スサノオの狼藉(ろうぜき:乱暴な様子)を憂い、太陽神アマテラスが岩の中に身を隠してしまったことがあります。そこでアマテラスを様々な策を講じて引きずり出そうとしました。これを「天の岩戸」といいます。その中でとられた手段にアメノウズメノミコトの舞いというものがあります。

アメノウズメノミコトは日本神話の巫女であり、かつ日本最古の踊り子といわれています。岩の外で盛り上がっていれば、きっとアマテラスは気になって出てくるだろうと踏んだのです。

ここで特筆すべきは、巫女であるアメノウズメノミコトが「自身の性器に紐を垂らしただけの、ほぼ全裸の状態で舞い踊った」という点です。神話は現実を寓話的に表しているケースが多いのですが、この場合も古代に行われた祭礼の儀式を模したものと言われています。

つまり、古代では実際に、巫女が祭礼の際にストリップをしていたのです。

奈良時代では、このような巫女は「遊行女婦(うかれめ)」と名を変えて、各地を巡業することを生業にしはじめました。宴会に招かれ、その場で性行為をすることが主な業務でしたが、その際の契約金は現在の価値で10万円ほどだったそうです。

このときすでに、遊行婦女は世の女性たちのあこがれの職業だったといいます。

その後、平安、鎌倉と時代が進むにつれ、彼女たちは遊女と呼ばれるようになりました。軍記物「平家物語」には、平清盛ですら美しい遊女を思い慕ったと記されており、遊女が高貴な存在として認識されていたことがわかっています。

中世から近世にかけての遊女

室町時代、幕府は傾城局(けいせいのつぼね)という遊女の管理機関を設置するに至ります。

安土桃山時代となると、傾城局は城壁で取り囲まれ、ひとつの郭(出入り口)で入場を制限されました。これにより、遊郭(ゆうかく)という言葉が使われるようになったといいます。

元禄時代、性風俗はとても盛んな時期を迎え、西の新町遊郭、東の吉原遊郭が代表的な歓楽街となりました。これら遊郭に勤める女性は大変教養があり、羨望と敬意を込め花魁(おいらん)と呼ばれていくようになったのです。

遊郭は今でいう高級風俗店以上の扱いを受けており、花魁と接するためには、現在の価値で何百万円もの費用が必要となったともいわれています。そのため、遊郭を庶民が気軽に利用することはできませんでした。

しかし、江戸時代に岡場所という新たな形態の風俗店が誕生すると、庶民でも手の届く値段で相手をしてもらえるということから、爆発的な人気を博すようになります。

ここで働く女性のことを女郎(じょろう)といいましたが、言わずもがな花魁とはライバル関係にあったそうです。

以上のように、日本人は古来、性風俗に関して大変寛容な感性を持っていました。そんな日本人が性風俗を蔑視しはじめるのは、明治以降の脱亜入欧の風潮などに由来するそうです。

ただ、明治から現在までたったの150年あまり。古代から明治までと比較すると、その歴史の短さが窺えます。

ナショナリズムに基づいた日本は、明治以降にできたもので、貞淑(ていしゅく:しおらかなさま)なことが善であると考えられたのも、実は極めて浅い歴史しか持たないのです。

千年以上も受け継がれてきた日本の文化が、現在陰の存在となってしまっているのは、非常に嘆かわしいことです。真に日本の文化を愛するのであれば、性風俗に関する歴史から目をそらさず、むしろ誇るべきだといえます。


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