日本での暴力団は、社会の裏側を牛耳り、反社会的なことで利益を得る団体を指します。一般的には、やくざなどの名称で知られています。
そんな暴力団ですが、風俗とも密接な関係を持っています。暴力団は、風俗がグレーゾーンなことを利用して、みかじめ料(これを払うことで、暴力団は風俗店がそこで営業することを許可する。ショバ代とも呼ばれる)を請求したり、暴力でのトラブル解決をしたりするのです。
こうしたつながりは、風俗と切って離せない状況となっています。今後の風俗界も、完全に暴力団との関係を断つことは難しいでしょう。
ここでは、具体的に風俗と暴力団とが、どのような関係にあるのかを見ていきます。
風俗は暴力団が仕切る社会
暴力団は、反社会的な仕事を行うことで利益を創出しているため、存在自体が違法です。もちろん、暴力団の要求に応じることも、罪に問われます。
そのため、日本のすべての都道府県では、暴力団追放のために、「暴力団排除条例(暴排条例)」を敷いています。こうして、名目上は一般市民と暴力団との関係は、完全に断たれました。
しかし、風俗が暴排条例を盾に、暴力団の要求を断ることはできません。もし断れば、客に成りすました暴力団員が嬢に暴力を働いたり、店の前に汚物を投げ入れたりと、必ず仕返しが待ち受けているからです。
以上のことから、通常の風俗店はいずれかの組にお世話にならざるを得ない状況です。かなり消極的な動機で暴力団とかかわる羽目になりますが、これが風俗界の常識です。
風俗が暴力団に支払う金額
暴力団の傘下となると、風俗店はみかじめ料を要求されます。
ただ、暴力団へ用途不明の金銭が流れたことになるので、風俗店の会計上に問題が発生します。そこで、暴力団はおしぼりや、観葉植物を風俗店に置きます。
これは暴力団が、風俗店にリースしたものであるため、毎月のみかじめ料は会計上「リース代」となります。
このようなからくりを用いて、暴力団は風俗店から金銭を継続的に搾取します。これ以外にも、月によっては熊手などの品を風俗店へ売りつけ、通常よりも高いみかじめ料を要求することがあります。
暴力団とはかかわりたくない風俗店
このように、毎月暴力団に対して金銭を支払う風俗店ですが、仲がいいかというとそうではありません。風俗店も、暴力団は怖いのです。ただし、やむを得ない場合は、かかわらざるを得ません。
例えば、客との間でトラブルが発生したとします。その客は嬢を強姦するような悪質な客であるため、店としては対策を打たなくてはなりません。ただ、風俗店は社会的にグレーなため、警察にも安易に知らせることもできません。
そこで、風俗店は仕方なく暴力団に解決を仰ぎます。暴力団は、トラブルのレベルに対応した金銭を風俗店から受け取り、非合法的な解決を試みるのです。
しかし、そうとはいっても、このようなケースは稀であり、暴力団を頼るのは本当の最終手段です。暴力団と深くつながることは、摘発の対象になるリスクが高まるため、風俗店にとってメリットがありません。
近年は、暴力団の取り締まりが強化されており、傷害などを用いて暴力団がトラブルを解決することは少なくなってきました。ただし、それであっても暴力団であることは変わりがないため、いつ何が起きるかわからない危険な要素です。できるだけかかわりたくないという風俗店の心情が変わることはありません。
風俗店は暴力団とかかわりを持っていますが、それと同時に警察とも密接な関係を持っています。それだけに、風俗店は常に板挟みの状態にあります。
警察により過ぎても、暴力団により過ぎても、いいことはありません。風俗店が長続きする秘訣は、この絶妙なバランスを保つことにあるのです。
みかじめ料の金額と内容
なお、風俗店が暴力団に支払うみかじめ料は店によって異なります。無店舗型のデリヘルでは月に3~5万円、店舗型では月に8~20万円ほどの費用を支払うのが一般的です。
通常、風俗店を開業すると店の電話番号に暴力団から連絡が来ます。そして、「我々暴力団が地域の風俗店を管理している」、「トラブルの際には助けてやる」などの理由からみかじめ料を請求します。
素直に暴力団に従って料金を支払う店もあれば、「何かあれば警察を頼る。警察と対立する関係にはなりたくない」として支払いをしない店もあります。デリヘルの場合は店舗を持たないため、暴力団に支払いをしない店が比較的多いです。
また、風俗店と暴力団の関係の深さは地域によって異なります。特に深いのが沖縄です。沖縄は地域のつながりが非常に強く、しがらみがあります。それぞれの地域で力を持っている暴力団員がおり、風俗店を開業する場合は地域の団員に従うのが絶対となっています。
みかじめ料を支払わないと「嫌がらせ」がある
みかじめ料を支払わない場合、暴力団は店に「嫌がらせ」をしてきます。行われることとして多いのが架空オーダーです。「暴力団の関係者が店に架空の予約をたくさん入れる」という行為です。
架空の予約が増えると店は混乱し、通常営業ができなくなってしまいます。店は電話を受けた時点で架空オーダーと気付くことはがあるものの、100%架空オーダーとは言い切れないことが多く、その時点では予約を受け付けるしかありません。
また、暴力団員がお客様のふりをして店に来店し、風俗嬢にレイプを行うことがあります。女性に身の危険があるため、風俗店にとって非常に嫌なことです。そのほかにも、さまざまな小さないたずらも行われます。店のドアに大便や小便をかけられたり、店の待合室を荒らされてしまったりします。
このような嫌がらせが執拗に行われることで、店が仕方なくみかじめ料を支払うケースは多いのです。
法律により暴力団排除の動きがあるが、現実は厳しい
暴力団に対しての法律は、1992年に「暴対法(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律)」という法律が定められ、2010年に入ってより厳しい内容である「暴力団排除条例」が定められました。
これにより、一般の人が暴力団と関わりを持つことは禁止されました。暴力団への金銭の支払いは違法行為となっています。暴力団は変わらず新しい風俗店にはみかじめ料の支払いの要求をかけています。支払いを求める暴力団は違法で、支払いに応じる風俗店も違法行為をしていることになります。
しかし、現実問題として、店はみかじめ料を支払わないと嫌がらせをされてしまいます。いやがらせを受けている段階で風俗店が警察に連絡しても、警察が行うことは「中止命令書」もしくは「再発防止命令書」という警告文書を暴力団に送るまでにとどまります。
警察は事件として立件できる規模の被害が出るまでは、暴力団への直接的な対応は行わないのです。
警察の警告だけでは、暴力団はすんなりと風俗店への嫌がらせをやめません。警察が立件に動かない範囲で、店を追い込むような嫌がらせをします。
このように、法律で暴力団との関わりが禁止されていても、風俗店は現実問題として暴力団との関わりを避けにくい状況となっています。警察ではこうした現状から、風俗店に「不当要求防止責任者」を決めるよう指導しています。
要は、暴力団から不当な要求を受けたとき、それに対応する責任者を決めておくのです。そして、この責任者に講習によって暴力団の要求への対応方法を伝えることで、状況の改善を図っているのです。