日本では、売春は法律によって禁じられている行為です。ところが、実際のところそれは建前で、多くの場所で売春や売春に近しい行為が行われています。風俗店などが、その最たる例でしょう。
ただし、風俗店の場合は、行政からの営業認可が下りているため、違法店でない限り摘発されることは稀です。
一番の問題は、「個人で、もしくはあっせん団体によって売春を行っている女性がいる」という現状です。こうした個人売春に手を出してしまう女性は、何かしらの事情があることがほとんどです。何の理由もなく自身から進んで手を出すケースは、全くないといっても過言ではありません。
そうした中、近年では高齢者の売春が横行しています。中には70代を超えた女性も売春をしていたというケースもあり、れっきとした社会問題となっています。
彼女たちは、一体どうして売春を続けなくてはならなかったのでしょうか。その答えは、「貧困」と「孤独」に隠されていることが多いです。実際にどういった理由があるのかを、例を交えながら解説していきたいと思います。
「超熟女」風俗
2013年、東京のあるクラブが摘発を受け、経営者が逮捕された事件が起きました。このクラブは、「超熟女」の在籍を売りにしており、客から指名された女性をホテルへと派遣する、いわゆるデリバリーヘルスのような業態で運営していました。
ここに在籍していたのは40代から70代の女性であり、かなり高齢者も働いていたことが明らかとなりました。
客である男性が80代であったことから、当時この事件は一種の「ネタ事件」のように扱われていました。ただし、これはただの面白ニュースで片づけてしまうのは、非常に危険なことです。
普通ならば、70代にもなれば貯金も年金もあるはずです。そうした女性が売春を行うのは異常事態に他なりません。
高齢者の貧困
彼女たちがこうしたクラブに在籍していた理由は定かではありません。ただ、70代にもなって売春の輪から抜け出せなかったのは、彼女が貧困に苛まれていたからではないでしょうか。
年金は、現状65歳を過ぎた方なら受け取ることができるシステムです。しかし、若いうちに年金を払うことのなかった人物に、その給付はありません。
すなわち、年金を受け取ることができないのは、「若いころから貧困で、年金を払えなかった人物」なのです。そのため、年金を払えない水準で生活をしていた方は、65歳以降も何かしらの方法で金銭を得る努力をし続けなければならないのです。
孤独と売春
高齢者の中には、すでに配偶者を亡くしてしまっている方も多くいます。残されたのが男性であっても女性であっても、その生活は他者のフォローなくては成り立ちません。
そうした状況では、ひとり残された高齢者にとって、人とのつながりは大変貴重なものとなってきます。子供や親戚のいない孤独な高齢者にとって、「自分の相手をしてくれる人物」は得難い資産です。
もちろん、上記に挙げたような「高齢者女性が売春を行う理由」は推測の域を出ません。しかし、そうした方が「たとえ売春であっても、自分の相手をしてくれる人物がいるのであればそれでも構わない」と考えてもおかしくはありません。
高齢者であっても需要があることは2013年の事件で立証済みです。そのため、売春で孤独を癒すことは、それほど無謀な手段でもないのです。
高齢者の売春は、笑ってすむ問題ではありません。高度経済成長以来、日本における貧困は姿を消したかのように思われましたが、今となっては度外視できないほど大きな問題となっているのが事実です。
また、高齢者の急増に伴い、孤独や無縁などの問題が増え続けていますが、これは決して他人事ではありません。いずれは誰しも高齢者になるのですから、明日は我が身と捉え事態を深刻に考えていく必要があります。
高齢者女性の売春の手口
一般的には需要がないようにも感じられる老女の売春であっても、地域によっては横行してしまっています。もちろん、供給は需要がなくては生まれません。つまり、そうした女性にもちゃんと客は付いています。
それでは、彼女たちは一体どうやって仕事を得ているのでしょうか。また、高齢者の売春がどういった地域で盛んに行われているのかも、併せて見ていきたいと思います。
高齢者の売春が多く行われている地域
売春と性風俗は、厳密には異なる定義によって成り立っていますが、ここでは高齢者の性風俗に関しても解説していきます。
高齢者女性が在籍していることを売りにしている風俗店は、確かに存在します。そうした風俗店は彼女たちを「熟女」と呼び、ひとつのジャンルとして確立させています。
熟女系風俗店が多いのは、東京の東側に位置する地域です。より詳しくいえば、台東区の鶯谷(うぐいすだに)や、浅草などといったいわゆる下町と呼ばれる場所です。
そうした場所に熟女系風俗店が多いのは、古くから遊郭(ゆうかく:昔の風俗店の呼び名)で働けなくなった女性を受け入れる街として発展したという歴史を持っているからです。
現在、熟女系風俗店は無店舗型経営であることがほとんどです。つまり、在籍している嬢の多くはデリバリーヘルスとして働いています。
一方で、個人売春をしている高齢者はどういった場所に多いのでしょうか。実は、個人売春をする高齢女性も、鶯谷や浅草などに多いのです。なぜならば、こうした地域には初めから熟女風俗を目的とした男性が多く集まるため、個人での客引きに引っかかってくれるケースが多いからです。
個人売春の手口
風俗店に在籍するわけでもなく、個人で売春をしている高齢女性は、一体どのような手口で売春をしているのでしょうか。
基本的には、こうした女性も普通の女性の売春と同じように、街角で声をかけたり、かけられたりするのを待ちながら客を得るようです。しかし、彼女たちと普通の売春婦との決定的な違いは、その値段です。
もちろん、売春の値段は人によってそれぞれです。1万円以上取ろうとする売春婦がいれば、千円台で手を打つ売春婦もいます。
ただ、下町で売春を重ねる高齢者女性の場合、売春の値段は3000円や2000円台であることが多いのです。通常の売春は、これに男性が支払うホテル代も加算されて総支払金額となりますが、それを含めても5000円程度にしかなりません。
つまり、彼女たちの価値は、驚くまでに低いのです。需要があるといっても、需給のバランスは著しく偏っているのでしょう。
「ノースキン(NS)でいいよ」
売春をする高齢者女性の多くは、すでに月経が止まっている年代です。そのため、売春を交渉する際に当たって「ノースキン(NS:コンドーム無着用)でいいよ。月経はもう上がっちゃったから」と語る女性が多くいます。
もちろん、コンドームには妊娠だけではなく、性病を防止する効果もあるので、コンドーム無着用のセックスは推奨できません。
ただここで寂しいのが、彼女たちはこうした部分を売りにすることしかできないという点です。客としても、おそらくかなりの熟女を買春するにあたって、コンドーム無着用でのセックスが前提のように考えていることでしょう。
「ノースキンでいいよ」という彼女たちの発言は、彼女たちにとって客に対しての精一杯のもてなしなのです。
出会い系サイトなどを活用して個人売春だけでなく、風俗店で働く女性であってもノースキンでのセックスが頻繁に行われています。ソープランドなどであれば、女性とセックス(本倍行為)をすることができます。ただ、一般的なデリヘルであればセックスできません。
しかし、こうした高齢女性のデリヘルではセックスが可能であったり、さらにはノースキンでも問題なかったりすることがあるのです。
売春の世界はとても深く、その底の暗さを知ることは極めて困難です。デリヘルはほぼ合法的な存在ではあるものの、セックスなしであるために合法なわけです。それを逸脱すると違法になってしまいます。そういう意味では、高齢者の売春は頻繁に行われているのが現状です。