性欲を満たす方法にはさまざまな種類があります。その中でも一般的な方法のひとつが、いわゆる「エロ本」を見ての自慰行為(オナニー)です。
エロ本は「成人向け雑誌」や「アダルト本」、「18禁本」と呼ばれることもあります。エロ本は昔から男性の性欲を満たすためのツールとして支持されてきました。
ここでは、エロ本の明治時代(1868~1912年)以降の歴史を紹介します。
エロ本の歴史は明治時代が大きな転換期
明治時代はエロ本の大きな転換期となりました。それは、明治時代には印刷技術が大きく発達したためです。ただ、このころはまだ、現代のような写真(グラビア)はありませんでした。
明治時代までにも、エロ本にあたるものは存在していました。江戸時代には春画(しゅんが)という「女性の裸体を描いた絵」が人気となっていました。春画は江戸時代に主流となっていた「浮世絵(うきよえ)」という絵画のジャンルのひとつでした。
男性は春画に描かれた女性の裸体を見て、性的興奮を覚えることがありました。しかしその絵は現代のエロ本に掲載されているようなグラビアではなく、あくまでも「筆を用いて描かれた絵」でした。
明治時代には印刷技術が向上し、リアルな女性の姿に近い絵がエロ本に掲載されるようになりました。
また、明治時代には「造化機論(ぞうかきろん)」という書籍が出版されました。当時、性器のことは「造化機」と呼ばれることがありました。
造化機論は現代のエロ本のように性欲を満たすためだけでなく、男女の性器の詳しい図解や精子と卵子についての解説など、「性に関する知識」が盛り込まれた書籍でした。
大正時代(1912~1926年)になると「変態心理」や「変態性欲」という雑誌が出版されるようになりました。さらに昭和時代(1926~1989年)には「グロテスク」や「猟奇画報」などの雑誌も出版されました。
これらの雑誌はいずれも「猟奇」という言葉で性を表現していました。大正・昭和時代には怪談が流行していたため、雑誌の名称も流行を意識したものが多くなっています。
上記の雑誌は明治時代の造化機論とは異なり、エッチな話題がたくさん掲載された「娯楽的に楽しめる内容」になっていました。
昭和時代には、1939年から1945年にかけて第二次世界大戦という大規模な戦争が起こりました。1930年ごろまでに、上記の雑誌は出版規制によって発行が禁止されました。そして、第二次世界大戦の前にはエロ本はほとんど出版されなくなりました。ただ、非合法に出版していた雑誌は存在していました。
ちなみに江戸時代に流行した春画は、昭和初期のころまで残りました。
戦後はエロ本の種類が増えた
第二次世界大戦が終わると、日本ではGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)によって民主化が進められました。
出版に関しても規制が解放され、エロ本がたくさん発行されるようになりました。当時のエロ本は紙質が良くなかったことから「カストリ雑誌」と呼ばれました。カストリは当時、「低品質のお酒」のことを指しました。
戦後直後のカストリ雑誌は、戦前に流行した「猟奇」という雑誌など、それまでに発行された雑誌を印刷し直したものが中心でした。しかし徐々に、種類が増えていきました。
「夫婦雑誌」という雑誌は、夫婦の性生活をテーマにした雑誌でした。当時のエロ本はB6サイズのものが多く、夫婦雑誌もそのひとつでした。また、「奇譚(きたん:珍しい話)クラブ」という雑誌はSMや同性愛をテーマとしていました。
昭和後期には現代に近いエロ本の出版が始まった
昭和後期になると、エロ本に使われる紙の質や印刷技術がさらに向上しました。そして1950年代中盤(昭和30年代)になると、グラビアが掲載されるようになりました。
平凡出版(現マガジンハウス)という出版社が1964年から創刊した「平凡パンチ」は、日本で初めて女性のグラビアを掲載して、当時の男性に大人気となりました。
また、現代でも人気の雑誌である集英社の「週刊プレイボーイ」も、平凡パンチに対抗する雑誌として1966年に創刊されました。
また、「ポケットパンチOh!」という雑誌は、当時流行となっていた成人向け映画「日活ロマンポルノ」の女優を中心に、アダルト映画の情報を掲載していました。日活ロマンポルノは1988年まで製作されましたが、ロマンポルノ終了後のポケットパンチOh!は、アダルトビデオ(AV)情報誌に変化しました。
1980〜1990年代になると、コンピュータの登場によって男性の性癖にも変化が生じました。セーラー服を着た「美少女」が注目されるようになり、エロ本に美少女漫画が掲載されるようになりました。
また、1990年代には、エロ本はさまざまな種類が出版されるようになりました。そして、たくさんの男性に人気となりました。しかし2000年代に入ると、DVDやインターネットでエッチな画像や動画を手軽に見ることができるようになりました。そのため現在は、紙媒体のエロ本は衰退傾向にあります。
エロ本は現在に至るまで、このような歴史を経てきました。娯楽として多くの男性に親しまれているエロ本には、長い歴史があるのです。