東京の歓楽街の中でも有名な街のひとつに、新宿の「歌舞伎町」があります。歌舞伎町にはたくさんの風俗店があり、東京だけでなく日本全国、さらには海外からも観光客が訪れています。
しかし、歌舞伎町ではいわゆる「ぼったくり」の被害にあうことがあります。ぼったくりは「相場とは大きくかけ離れた料金を会計の際に請求されること」を指します。
ここでは、歌舞伎町のぼったくりについて紹介します。
歌舞伎町で行われる3種類のぼったくり
歌舞伎町で行われるぼったくりは、大きく3種類に分かれます。
チャージ代、テーブル料金
ひとつ目は「チャージ代やテーブル料金として、高額な料金を請求する場合」です。入店時には1時間4,500円など、一般的な料金が提示されます。しかし会計時にチャージ代などとして5万円や7万円などの高額な費用を請求されます。
実はぼったくり店であっても、チャージ代やテーブル料金を店内に掲示していることがあります。しかし店内は薄暗くなっていたり、料金が小さく掲示されていたりするため、利用客が気付かない場合が多いのです。
ドリンク代が高額
2つ目の例は、「実はドリンクが高額なものだった」という場合です。たとえば「ワインをください」と店のスタッフに注文すると、勝手に高級なワインを提供されてしまうことがあります。そして1杯1万円などの料金を請求されてしまいます。
「高級なワインを注文したつもりはない。1杯1,000円のワインを注文したのです」と伝えても、店のスタッフは聞き入れてくれないことが多いです。
また、ぼったくり店によっては、実際に提供しているお酒が安いものでも「高級なお酒です」と言い張る店さえあります。
テキーラボール
3つ目の例は、「テキーラなどが入ったゼリーをドリンクに勝手に入れる」というものです。これは「テキーラボール」と呼ばれることがあります。ゼリー状のボールにテキーラが含まれており、店のスタッフがドリンクの中に2~3個入れてきます。
店のスタッフは「テキーラボールは1つ5,000円する」と言い張り、ドリンク1杯につき1~2万円を請求するのです。
このように歌舞伎町の風俗店は、悪質な手口でぼったくりを行ってきます。
ぼったくりにあわないための対策方法
歌舞伎町でぼったくりにあわないためには、「客引きについていかないようにする」ことが大切です。
歌舞伎町には、道行く男性客に声をかけて客引きをする人がいます。歌舞伎町での客引き行為は条例で禁止されています。違法行為であるにもかかわらず客引き行為を行っているということは、紹介される風俗店もぼったくり店である可能性が高いのです。
客引きの中には、良心的な風俗店を紹介してくれる人がいます。ただ、こうした人は少なく、悪質な客引きのほうが圧倒的に多いのです。とくに歌舞伎町の風俗店を利用したことがない場合は、客引きの紹介で風俗店に行くべきではありません。
また、「しっかりとしたホームページがある店を選ぶ」ことも大切です。ぼったくりの風俗店は違法であるため、分かりにくく営業されていることが多いです。そのため、きちんと作られたホームページをもたないことがほとんどです。
きちんとした作りで料金を明示したホームページを開設している風俗店は、歌舞伎町の店であっても良心的な店である可能性が高いです。
無料案内所の紹介は信頼できない
また、歌舞伎町で気をつけたいのが「無料案内所の利用」です。
無料案内所は、「男性客に対して無料でお勧めの風俗店を紹介する施設」のことを指します。無料案内所は風俗店から紹介料を得ることで運営されています。そのため、男性客は無料で相談をすることができます。
以前は「無料案内所は優良な風俗店しか紹介しない」といわれていました。しかし近年は、無料案内所の紹介であっても安心できなくなってきました。それは「ぼったくり店が無料案内所を営業するようになっているため」です。
ぼったくり店を紹介する無料案内所は、良心的な案内所と見分けがつきません。そのため、「無料案内所に店を紹介してもらえば安心だ」と思っていると、気付かないうちにぼったくり店を利用することになってしまうのです。
このように歌舞伎町の風俗店はぼったくり店が多いため、安易に入店しないよう気を付ける必要があります。歌舞伎町で店を選ぶ際は、無料案内所を利用せず、必ず「インターネットで店のホームページがあるか」、「料金が分かりやすく表示されているか」の2点を確認しましょう。
歌舞伎町のぼったくりは以上のように種類があり、前もってぼったくりにあわないように気をつけて店選びをする必要があります。
歌舞伎町の客引きは全て違法行為
前述の通り、歌舞伎町の客引きについていくと高確率でぼったくりの店に連れていかれます。
歌舞伎町にいる客引きには大きく分けて3種類の人がいます。飲食店やカラオケ店の客引き、風俗店のスタッフによる客引き、風俗店に所属していない「フリー」の客引きの3種類です。歌舞伎町では飲食店やカラオケ店を含めて、客引き行為は全て違法です。
ただし、「店の敷地内での客引きに関しては合法」とされています。そのため風俗店のスタッフは、敷地内から出ないようにして客引きを行っていることがあります。
歌舞伎町で問題視されているのは「フリーの客引き」です。こうした客引きは店に所属していないため客引きをしてもよい敷地を持っていません。しかし違法であることを知りながら、客引き行為を行っていることが多いです。
以下では、フリーの客引きの仕事内容について紹介します。
フリーの客引きの仕事内容
フリーの客引きは違法ですが、元暴力団員などが仕事をしています。
彼らは暴力団に許可を得て仕事を行っています。客引きは3~10人ほどのグループで活動するのが一般的で、暴力団にみかじめ料として3~5万円ほどの費用を毎月支払っています。
客引きが暴力団に許可を得ずに仕事をしていると、定期的に歌舞伎町を見回っている暴力団員から「許可を得て仕事をしているのか」と警告を受けます。
そして暴力団の事務所などに連れていかれ、暴力を受けたり、罰金を支払わされたりします。
暴力団から許可を得ると、客引きは「縄張り」という活動できる範囲を決められます。歌舞伎町には数百人の規模で客引きがいます。そのためそれぞれの客引きに割り当てられる範囲は「道路の5~10メートルほどの狭い範囲」となっています。
縄張りを超えて客引きを行っていると、暴力団に見つかったときに制裁を受けることになります。この際も暴力や罰金が課されるため、客引きは不用意に縄張りを超えて活動しないように注意しています。
客引きは縄張りの範囲内で、通行する男性に声をかけます。「キャバクラが2時間飲み放題で4,000円です!」、「お客さん、おっぱいいかがですか!」のようなフレーズで、客引きは道行く男性の興味を引きます。
こうして客引きは男性客に風俗店を紹介すると、紹介先の風俗店から「バック」と呼ばれる報酬を得ることができます。
客引きと風俗店で結ばれる報酬についての契約
客引きは風俗店と報酬についての契約を結んでいます。報酬体系には2つの種類があります。
ひとつ目は「店の取り分が決まっている場合」です。男性客が1万5千円を店で支払ったとします。このときに「店の取り分は1万円」のように決まっており、残りの5千円が客引きへのバックとなります。
ふたつ目が「歩合制」です。男性客が店で1万5千円を使ったとします。このときに「客引きの報酬は、男性客が支払った金額の40%」のように決まっている方式です。この例では6千円が客引きの報酬となります。
また、男性客に提案する料金は、風俗店が客引きに任せていることが多いです。たとえば風俗店の取り分が1万円と決まっている場合、客引きは男性客に1万5千円で提案しても、1万8千円で提案しても良いことになっています。
より高い金額を提案するほうが、客引きの収入は高くなります。しかしその分男性客が安いと感じにくくなるため、客引きの判断力が試されます。
このようにして客引きは風俗店に男性客を紹介して、収入を得ています。客引きは紹介の数が増えるほど収入が高くなり、中には800~1000万円の年収を得ている人がいます。
客引きが成果を出すために行っていること
客引きはより多くの男性客を風俗店に紹介することが仕事です。客引きの中には強引な勧誘を行う人がいますが、一方で男性客や風俗店からの信頼を得ることでより多くの紹介につなげている人がいます。
こうした客引きは「手出し」という行為を行っていることがあります。これは「客引きが自分のお金を差し出すことで、男性客から信頼を得る方法」です。
風俗店によっては、客引きに「最低の提案料金」を決めている店があります。風俗店が「8,000円以下で店を紹介するのはやめてほしい」と客引きに伝えると、客引きはそれ以下の料金で男性客に提案をすることはできません。
しかし客引きは男性客に「本来は8,000円ですが、私が2,000円支払います。実質6,000円ですがいかがですか」というように手出しを用いて提案を行います。
このような提案をすることで、客引きの収入は減りますが、より安い料金を提案でき、男性客からの信頼も得ることができます。
男性客を増やす客引きの工夫
また、客引きは紹介する男性客を増やすことで、風俗店からも信頼してもらいやすくなります。風俗店を利用し終えた男性客によっては「2軒目の店」を検討する人がいます。このときに風俗店から客引きに連絡があり、「2軒目を紹介してあげてほしい」と依頼が来ることがあるのです。
客引きは男性客に2軒目の風俗店を紹介すると、再度バックを得ることができます。
しかし客引きはそれを全て自分の報酬とはせず、紹介してくれたお礼として1軒目の風俗店と報酬を分け合うことが多いです。これによってさらに客引きは店からの信頼を得ることができ、より多くの紹介につなげることができるのです。
このように客引きには、手出しを有効活用することでより大きな成果を上げている人がいます。客引きは違法な仕事ですが、大きな成果を上げるには一般的な仕事と同じように、お客や紹介先の風俗店との信頼関係が大切といえます。
客引きの仕事は以上のような仕組みで成り立っています。客引きはときに男性客の迷惑につながることがあります。
しかし、きちんと店を紹介する客引きは、歌舞伎町を楽しみたい男性客やより多くのお客様に来店してほしい風俗店にとって、必要な存在である面もあります。
ただ、前述のとおりほとんどの客引きはぼったくりの店と提携しているため、話に乗せられて付いて行ってはいけません。
歌舞伎町で行われているパトロール活動
警察は歌舞伎町のぼったくり店を定期的に摘発しており、歌舞伎町内でパトロール活動なども行われています。しかし歌舞伎町は暴力団員や暴力団の関係者などが活動しており、ぼったくり店はなくならない状況となっています。
歌舞伎町で遊ぶときには、自己防衛をすることが大切です。
ただ、歌舞伎町には「歌舞伎町商店街振興組合(以下、振興組合)」という団体があり、歌舞伎町の自治活動を行っています。その一環として、歌舞伎町内の違法行為をなくすためのパトロールを実施しています。
それでは、歌舞伎町で行われている振興組合のパトロール活動はどのようなものがあるのでしょうか。
「歌舞伎町内の迷惑行為の排除」が目的
振興組合のパトロールは「歌舞伎町内の迷惑行為の排除」を目的としています。
歌舞伎町では観光客に対して強引な風俗店への勧誘をしたり、女性のスカウトをしたりする人がたくさんいます。
こうした行為は「風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)」という法律によって禁止されています。上記の男性たちは、違法行為と知りながら警察の目を盗んで行っていることもあれば、新人スタッフが違法と知らずに行っている場合もあります。
こうした行為が注意されずにそのまま行われていると、世間からの歌舞伎町のイメージは悪くなってしまいます。
また、近年はインターネットの普及により口コミが広がりやすくなっているため、悪評が立つと歌舞伎町への客足が減少する可能性があります。
振興組合は歌舞伎町に対するイメージの低下を防ぐため、そして歌舞伎町をより安全に楽しめる街にするためにパトロールを行い、違法行為の排除に勤めています。
振興組合のパトロール活動の内容
振興組合が行っているパトロール活動は、50~60代の男性組合員を中心として行われています。パトロールには危険がともなう可能性があるため、女性は活動していません。
パトロール活動では組合員が歌舞伎町内を歩き回り、違法行為が行われていないかを確認します。活動は週に3回ほど、歌舞伎町がにぎわう夜の20~22時ごろの時間に行われています。
以前パトロール活動は19時ごろに行われていました。しかし「遅い時間に行わないと意味がない」という意見があり、現在の時間帯となりました。
組合員は歌舞伎町内を巡回して、客引き行為やスカウト行為を行っている男性がいた場合、注意を行います。
組合員が上記の行為を行っている男性に「行っていることが違法であること」を伝えると、男性はその場から立ち去ることが多いです。
また、違法行為を行っている男性はパトロール活動が始まると、注意を受ける前にその場を立ち去ったり、店に連絡して場所を移動したりすることも多いです。
このように振興組合のパトロール活動は、違法行為を行う男性に対して「牽制の効果」があります。2007年から始まったこの活動は、現在に至るまで継続されています。
警察が動かなかったことから、振興組合が活動を開始した
一般的に地域の違法行為を取り締まる存在として「警察」があります。しかしかつての警察は、歌舞伎町で行われている違法行為に対して積極的に動こうとしませんでした。
振興組合による歌舞伎町のパトロールが始まったのは2007年からでした。それまで振興組合は警察に「歌舞伎町の違法行為の取り締まりをしてほしい」という要望を出していました。
しかし警察は動いてくれず、振興組合は警察を頼るのをあきらめて、2007年から自主的にパトロール活動を開始したのです。
振興組合は1994年、歌舞伎町内にあるセントラルロードという場所に「臨時派出所」を設立し、国に寄付しました。振興組合は派出所の建設費用を組合員で捻出し、警察に「派出所に警察官を駐在させてほしい」と依頼しました。
派出所の設立初期のころは警察官が駐在し、歌舞伎町の監視活動が行われました。しかししばらくすると派出所に警察官はいなくなり、使用されない施設となってしまいました。
振興組合はこの出来事に失望しました。しかし振興組合はそれ以降も、警察に歌舞伎町のパトロールの依頼をしていました。ただ、その要望は警察に受け入れられることはなく、振興組合自身によるパトロール活動が始まったのです。
しかし近年は振興組合の活動が認められるようになってきました。こうして行われたのが「歌舞伎町合同パトロール」という活動です。新宿警察署の警察官や新宿消防署の消防士、振興組合員などが一丸となり、合同でのパトロールが行われました。
このように歌舞伎町商店街振興組合によるパトロール活動は2007年から始まりました。そして現在に至るまで活動は行われ、歌舞伎町の安全が維持・改善されてきました。
歌舞伎町は現在「欲望の迷宮都市」と称されるまでに発展し、日本人だけでなく外国人も増えてきています。振興組合のパトロール活動は歌舞伎町をより良い街にするために、重要な役割を果たしているのです。